「 I+ 」
現在、私たちは、人、物、建物、自然、街など様々な関係性の中で生きている。
しかし、関係性というのは、他者の存在があって初めて生まれるものであり、目で見る事や触ることはできない。
さらに、一時として同じではなく、常に揺らいでいる。
我々は、曖昧な関係性を、相対的な建築によって表現したいと考えた。
そこで我々は、潜在性と透過性を併せ持つ日本建築に注目し、その中でも、日本建築独特の「障子」に可能性を感じた。
本来、部屋を仕切るためのものである「障子」で構成された空間は、
「障子」の重なりが、時には壁よりも濃く、時には空気よりも薄く、変化する事によって、目に見える形で関係性が表現される。
そこで我々は、伝統的な「障子」に新たな命を吹き込み、現代的な機能を付加した「障子+」で、構成された空間を提案する。
この空間は、家族という最も小さく、最も身近な繋がりを「障子+」の濃淡によって映し出す。
さらに、家族の空間と個人の空間は「障子+」によって相対的に変化する。
自身を限りなく孤立させることも、家族と空間を共有することも、自らの意識によって可能となる。
空間は家族によって創られる。
このような空間の関係性は、次第に街にも広がっていき、新しい関係性を生み出す。
街は、それぞれの家族によってつくられた「障子+」の重なりと、
公共建築での見ず知らずの人との関係によってつくられた「障子+」の重なりによって、
現在、建築の外観が街の景観をつくっているように、「障子+」の重なりによる濃淡が街を創っていく。
建築は、「I(私、個人)」では完成しない。
自分以外の誰かによって、「I+」は完成する。
よって、「SPACE+」は、「障子」の重なりの中に生まれる。